Quantcast
Channel: 半身不随になった元IT系社長の独り言
Viewing all articles
Browse latest Browse all 904

着替え

$
0
0
昨日も息子と一緒に近くの福祉センターのプールに泳ぎに行った。

子供というものは成長のスピードが速いもんだ。

昨日は、なんと200メートル連続で泳げるようになっていた

5月にこのプールに発揮し始めた頃には、プールの半分

つまり12.5 m程度で立ってしまっていた息子が

なんと200メートルも泳いでいるのだ。

それは喜ばしいことだったのだけど

今回ちょっと嬉しいというか、良かったというか

息子もこういう心を持っているのかな

と思った出来事があった

それは更衣室でのことだ。

僕のような身体障害者が

日常生活で最も苦労することのひとつは

(健常者の方がほとんど知らないと思うけど)

それは着替えなんだけど

特に僕のように感覚障害がひどいと思うように着替えができない

朝起きて着替えをするだけで軽く15分程度はかかる。

そんな障害者にとってめんどくさい着替えだけど

スイムスーツの着替えなんていうのは特に大変だ。

今のスイムスーツは昔のような海水パンツと言われるようなパンツ型ではなく

膝の上までしている長いスイムスーツなので特に着替えが大変なのだ。

僕は障害者になってから実習生活の中でこの着替えほど嫌なものはない。

たかが着替えごときでなぜこんなに時間をかけなければならならないのだろうという

無意味さを感じると同時に着替えのたびにいつも苛立ちを感じる。

そして、昨日はたまたま泳ぎ終わった後に

苦労しながら苦労しながら着替えをしていた。

そこはさっさと着替えてしまってロビーで待っていた


で、僕は着替えをしている隣に

あきらかに僕よりも重度の身体障害者の方が着替えをしておられた。

見るからに四肢麻痺しているようであった。

つまり両手足があらぬ方向に曲がってしまっている感じである

(きっと小児麻痺という感じの障害のような気がした)

非常に苦労をしておられるのは見てわかった。

もちろん(僕も同じだが)立った状態でスイムスーツを

脱いだりすることは不可能なので

更衣室に置いてあるベンチに座り、

健常の右手で少しずつスイムスーツを脱がしながら

感覚のない左足から剥ぎとるようにしながら着替えをしていた

そうすると隣の方も僕が障害者だと気付いたようだ

そうこうするうちに隣の方が僕よりも早く着替えを終わらせたい

としようとしていることに僕は直感で気がついた。

それは競争心とかというものではなく、

その方にとって自分との闘いのひとつだったのだろうと思う

当然のことながら、半身麻痺である僕の方が四肢麻痺のその方より

着替えが早く終わってしまいそうだった。

お互いが背を向けてベンチに座っている状態だったので

ぼくはそれとなく着替えのスピードを緩め、というか手を止めてしまい

その方が着替えが終わってしまうまでちょっと待っていた。

そしてその方が更衣室を出て行くまで後ろを向いて座っていた。


なんとなくその方が自分との闘いに勝ってほしいと感じたからだ

余計なお世話だったかもしれないけれど・・・

そしてしばらくしてから更衣室から出て

ロビーで待っている息子のところに行って

更衣室での出来事を少し語った

ちょうどその時、ロビーから福祉施設の出口に向かって

その方が両手に杖をついて、半分あらぬ方向に曲がっている足を

必死に動かしながら歩いて出て行こうとしている姿が見えていた

僕は息子にあの人がねパパより早く着替えを済ませたいと

思っていたのがわかったから、パパはわざとゆっくりと着替えていたんだよと・・

遅くなった理由を伝えた。

そうして2人でその福祉施設の入り口を出たところで

その方が僕らの前を駐車場に向かって一生懸命歩いていた

その方を僕の息子が追い抜いて駐車場に向かおうとした瞬間


それを僕の息子が急に立ち止まってしまった

そして僕の方を振り向いて、戸惑ったような顔をしている。

前に進もうとしてその人の後ろまで来ると突然立ち止まってしまう

どうやら、どうしても追い抜くことができないようだ。

それは息子なりの心遣いのようだった。

そんな息子を見て、

そんなことまで考えることができるようになったんだなと

知らない間に成長したんだなぁと

そんなことを感じた昨日だった。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 904

Trending Articles